何らかの事情により一般的な全日制高校に通うことが難しく、通信制高校に通うという選択をする方も最近は増えてきています。
通信制高校を卒業することで得られる最終学歴はどのようになるのでしょうか?
今回は通信制高校を卒業した後に得られる最終学歴に関しての知識や、卒業後の就職を有利に進めていくための方法を紹介します。
しっかりと卒業後のことも考えて通信制高校の卒業を目指しましょう。
目次
通信制高校卒業で得られる最終学歴は?
まず、通信制高校を卒業した際に得られる最終学歴とはどのようなものなのでしょうか。
通信制高校を卒業した場合は「高校の卒業資格」を得ることができます。
つまり、「高卒」という肩書を取得できるのです。「高卒資格」とは全日制高校、定時制高校、通信制高校のどれかにおいて卒業に必要な単位を修得すれば付与される決まりになっています。
したがって、通信制高校でも卒業すれば全日制高校と同じく「高卒」という最終学歴を得ることができるのです。
この「高卒資格」は似たようなものと思われている「高卒認定」とは全く異なったものです。
高卒資格と高卒認定の違いとは?
高卒資格と高卒認定は似ているようで内容は全く異なっています。
ここからは高卒資格と高卒認定では最終学歴においてどのような差があるのかを解説します。
高卒資格は高校を卒業したことを証明してくれるもの
高卒資格というものは前述のとおり、全日制・定時制・通信制高校のいずれかを卒業することができれば得ることのできる卒業資格になります。
そのため、最終学歴は「高卒」となるのです。
高卒認定を得ても最終学歴は中卒のまま
高卒認定は高校卒業者と同程度、もしくはそれ以上の学力を持っているということを証明してくれる資格にすぎません。したがって、最終学歴は「中卒」ということになります。
高卒認定を取得するためには、通信制高校に通う必要もなく、1年に2回行われる「高卒認定試験」という試験を受験して合格する必要があります。
つまり、高卒認定とは学力があることを認める資格にすぎないので、通信制高校を卒業して得られる高卒資格とは差があります。
しかし、高卒認定を取得した後に、専門学校などに入学し卒業することが出来れば、最終学歴は「専門学校卒」になります。
最終学歴が「中卒」の場合のリスク
「中卒」という最終学歴ではどのようなデメリットがあるのでしょうか。以下では具体的に不利になる項目を解説していきます。
仕事
日本においては残念ながら中卒での仕事というのは応募・採用・仕事内容・昇進など将来的な全てのことにおいて、あまりいい環境を期待することはできません。
アルバイトにおいても、現役の高校に通っている高校生が授業の合間にするアルバイトの求人は多くあっても、中学を卒業してそのままフリーターになった人向けの求人はわずかにしかないのが現状です。
イメージ
中卒のイメージは一般的には良くないのが現状といえます。
たとえどんなに立派な人格者だとしても、就職の面接などでは「高校を中退したまま中卒なのでこの人は入社してもすぐにやめてしまうのではないか」などと思われてしまう可能性もあります。
そのような偏見を持った人が世の中には多いのも事実です。学歴社会の良し悪しはさておき、事実として日本においては中卒に対しての風当たりが良いとは決して言えません。
高卒資格を得ることのメリット
高卒資格を取得することで今まではなかった可能性が切り開かれたり、将来できることの幅が広がったりとメリットは多くあります。
大学に入学することが出来る
大学に入学して、大学卒業の資格を得るためには高卒資格を持っていることが前提になります。
医者や教授、研究職などにつきたいという人は、大学で専門的な知識を学ぶ必要があるため、まずは大学に入学することが必要になります。
卒業後の就職活動がしやすい
将来やりたい仕事においての条件の一つに「大卒」という肩書が必要となる場合にも同様です。
大手企業などに就職したいと考えているキャリア志向の方にとっては高卒資格・大卒資格は必須となることは間違いないでしょう。
将来のためにぜひ通信制高校で高卒資格を取得して、将来のキャリアアップに繋げましょう。
通信制高校で高卒資格を取るまでの流れ
通信制高校では毎日学校に通う必要なく、卒業することができれば最終学歴を「高卒」とすることが出来ます。
通信制高校を卒業するために必要な条件
卒業することが出来れば「高卒」と認定される通信制高校ですが、全日制高校や定時制高校のように入学後に1学年ずつ進級していけばそぐ行できるという制度ではありません。
通信制高校を卒業するためには以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 最低3年間在籍していること
- 合計で74単位以上を修得していること
- 特別活動を30単位以上修得していること
特別活動というのはホームルーム活動のほかに、体験学習、生徒会活動などが挙げられます。
スクーリングという登校日に実施されることになっています。
登校日の設定は各通信制高校によって様々です。ほとんど毎日登校する必要がある通信制高校もあれば、1年で5回程度集中して通えばいい学校も存在しています。
自分の希望にあったスクーリング制度を設けている学校を選べば、負担に感じることなく卒業を目指すことが出来るでしょう。
通信制高校でも同級生に遅れをとることなく卒業できる
通信制高校では全日制高校や定時制高校に通う同級生に遅れをとることなく卒業することが可能です。
中学卒業後に進路として通信制高校を選択しても、3年間で必要な単位を全て修得できれば問題なく卒業できます。
また、全日制高校を退学してから、途中で通信制高校に入学したとしても、同級生に追いつくことは十分に可能でしょう。
なぜならば、通信制高校では全日制・定時制高校に通っていた間分の単位が引き継がれてカウントされるからです。
通信制高校なら一年中どこからでも転入・編入が可能な学校が多く、空白期間ができる心配も少ないです。
一方で、全日制高校や定時制高校への編入・転入となると、1学年下から始める必要がある場合も少なくありません。
学年制を採用するため仕方ないことではありますが、もしも同級生と同時期に卒業することを望むのであれば、学年制ではなく単位制の通信制高校をおすすめします。
通信制高校では3年で卒業できないこともある
通信制高校を卒業するための条件として、最低でも3年間の間は在籍する必要があります。
これは「3年間在籍していれば自動的に卒業できる」という意味ではなく、「卒業に必要な単位を取得すること」が卒業のための必須条件です。
学年制ではない分、1年間で何単位を修得すれば3年で卒業することができるのか自分で計算し、実行していかなければなりません。
通信制高校では、卒業までに3年以上かかる人や何年も在籍していながら結局卒業することができない人もいるのも事実です。
確実に3年きっかりの卒業を目指すのであれば、サポート体制が整った私立の通信制高校を選択することをおすすめします。
通信制高校を卒業するまでにかかる費用は?
通信制高校に通う上で気になる点の一つに「学費」があるでしょう。
通信制高校で必要な学費はどれくらいなのでしょうか。
通信制高校の学費は比較的リーズナブル
通信制高校には公立と私立があります。公立の通信制高校は基本的に週に数回スクーリングのある通学型の場合が多いですが、私立の通信制高校は通学型と自宅学習型が選べることが多いです。
いずれのコースを選択するにしても、学費はあまりかからないことが特徴です。
通学型を希望するならば、公立の通信制高校の方が授業料も安くねらい目です。
しかし、それだけ希望者が殺到することが多く、まれにですが定員割れになってしまうケースもあるので注意しましょう。
私立の通信制高校は就学支援金制度を利用するべき
学費がネックになり、私立の通信制高校を選択できずにいるのならば、「就学支援金制度」を利用するのも賢い選択です。
この制度は一年あたり、通常では118,800円、世帯収入によっては最大で237,600円もの授業料削減を受けることができます。
せっかく通信制高校で勉強をしようと思っても、「登校日が多すぎる」などの理由で挫折してしまっては元も子もありません。
私立の通信制高校で自分に合った学校を見つけることができたのなら、ぜひ就学支援金制度を利用してみてはいかがでしょうか。
通信制高校を卒業するためには?
通信制高校の学費はリーズナブルなことが多いです。特に公立の通信制高校の場合は、何年も在籍していても痛みを感じにくい金額です。
しかし、そのようなことがかえって仇となり何年も卒業できない状態が続いてしまうことも多いです。
そのような事態にならないために、ここからは通信制高校をきちんと短期間で卒業するために大切なことを解説していきます。
自主性を持つことが重要
通信制高校は全日制高校や定時制高校のように授業の時間割がありません。
自宅学習をする際はいつ何をどれくらい勉強する必要があるのかは自分次第です。
そのため、勉強をさぼりたくなってしまう日でもきちんと机に向かうことができるかは自主性の有無が大いに問われます。
進級のプレッシャーがある全日制高校や定時制高校とは違い、自主性をもって勉学に取り掛からないと「気づいたら3年間でほとんど単位をとることができなかった」というような事態に陥りかねません。
3年で卒業を目指す場合は、単純計算でも1年間に約25単位を取る必要があります。自分なりにコツコツと努力するのが難しいようでは3年間で卒業をするのは困難といえるでしょう。
目的意識がないと挫折しやすい
全日制高校や定時制高校では「学校に通っていたら、自然と卒業できてしまった」というケースも少なくありません。
一方の通信制高校ではなんとなく勉強しているだけでは卒業に繋がりにくく、常に目的意識を持っているかが問われてきます。
「3年間で卒業して同級生と同じタイミングで卒業したい」というような目的をしっかりと持っていれば、通信制高校を卒業するのはけっして難しいことではありません。
自宅学習においてはモチベーションを維持し続けるのが大変かもしれませんが、目的意識をもってチャレンジし続ければ十分3年間で卒業することも可能です。
通信制高校は就職において不利なのか?
通信制・全日制・定時制の高校は全て同等の「高校卒業資格」となっています。
したがって、履歴書にも「通信制過程」などと記載する必要は一切なく、面接官に通信制高校に通っていたと知られる心配もありません。
しかし、面接官によっては面接で聞かれる場合もあるため、その際は通信制高校に通っていた事実やその理由をきちんと話す必要があるでしょう。
ここで通信制高校が不利になるのか、という疑問がありますが、面接官によっては通信制高校の知識がなく、少し偏見を持っている人もいるかもしれません。
そのことが通信制高校に通っていたことが不利に働く理由にもなりえてくるでしょう。
とはいっても、通信制高校は決して楽して卒業できるわけではありません。
自分で自分自身を律しながら勉強を進めてきたこと、学校に行かない時間で頑張ってきたことなどをしっかりと面接官に伝えることができれば採用される可能性は高めることができます。
そのためにも自由な時間が多くとれる通信制高校の特徴を存分に活かし、自分のアピールできるポイントを在学中に作っておくことが重要になってきます。
就職活動を有利に進めるためには?
資格を取得する
高校の卒業後にそのまま就職を目指しているのであれば、ビジネスで役立ちそうな資格を取得することが熱意のアピールにもなるため有効でしょう。
資格取得をサポートしてくれる通信制高校も多く存在するので、学校が用意してくれる機会を活かして資格取得に取り組むことをおすすめします。
学校以外の勉強に取り組むことは自分の興味・関心の幅を広げるいい機会にもなります。
アルバイトで実績を積む
アルバイト経験のある方ならご存知かもしれませんが、実際に働いてみることで気づくことはたくさんあります。
敬語の使い方や時間を守ることの大切さ、お金の使い方、上司・部下との上手い付き合い方など基本的なことですが、様々なことを学ぶことができるでしょう。
こういった体験をしていることや、一つのバイトにのめり込んで長い期間継続できたという事実は就活の時にも信頼につながりやすく、採用にも有利に働くでしょう。
専門知識を学ぶ
大学を卒業しても就職できない、という人が増えてきている時代にも、多くの企業から必要とされる人がいます。
それは即戦力となる知識やスキルを持っている専門性の高い人材です。
通信制高校の中でも専門学科の就業率は27.4%となっており、普通科の就業率14.8%に対し約2倍の就業率を誇ります。
あまり知られていないかもしれませんが、私立の通信制高校には専門知識を身に着けられる学校もたくさんあります。
学べる知識は学校によって様々です。美容師や保育、調理師、システムエンジニアなどの専門知識が人気になっています。
カリキュラムに関しては専門知識を学ぶため、登校回数や授業の数が通常のコースよりも増えてしまいますが、通信制高校は卒業するための単位取得に関する拘束時間がもともと少ないため、その余分な時間を専門知識習得のために使うことが可能です。
そのため、全日制高校に通うよりも、時間に余裕をもって学ぶことができるという学校が多いです。
大学や専門学校への進学を目指す
通信制高校を卒業後に、すぐに働く必要もない人は進学してから就職を目指すという方法も一つの選択肢です。
大学や専門学校を卒業することで、求人の枠も大きく広がり、職業選択の幅も広がります。
しかし、大学も専門学校も、毎日通学し勉強を続ける必要があります。それが難しいようだと、就職はおろか卒業も困難になる可能性は大きいです。
大学や専門学校を目指す場合には、通信制高校に通っている間に、体調を整え、勉強などの準備をしっかりと行う必要があるでしょう。
通信制学校でも安心
通信制高校に通うことをプラスに捉えるのもマイナスに捉えるのも自分次第です。
通信制高校には不登校や高校中退など自分と同じような挫折を経験した生徒が集まっています。
そのため自分の気持ちを理解してもらいやすい環境にあるでしょう。中には中学ではクラスで孤立していたのに、通信制高校に入学してから友達ができたという人も多くいます。
通信制高校に通うことで対人関係に自信が付き、社会に出たからも人間関係を上手く構築できるようになったという声も多く聞きます。
自信は卒業後のあなたの姿を変えます。通信制・全日制・定時制高校などの学歴の違いだけでなく、在学中に学んだことを武器にして、どのように社会に羽ばたいていけるかが最も重要なことです。